米澤穂信 『真実の10メートル手前』 ― 2018/09/07

太刀洗万智シリーズの2(『さよなら妖精』を入れると3)作目。
太刀洗の推理が冴えます。
6つの短編からなる本です。
まず、東洋新聞の記者だった時代のお話から。
ベンチャー企業が経営破綻し、社長の妹で広報だった女性が失踪。
太刀洗は後輩を連れ、彼女の行方を推理し、山梨まで行きます。(「真実の10メートル手前」)
2話目は、電車に飛び降り、轢かれた人の写真を携帯で撮る女。
その女に近づく男・・・。(「正義漢」)
3話目、高校生カップルが心中。遺書が書かれていたノートの最後に書かれていた「たすけて」の文字。
彼らは一緒に黄燐を飲んで死のうとしたのに、何故、別々の場所で亡くなったのか。
太刀洗の推理は・・・?(「恋累心中」)
4話目。何かにつけ難癖をつける嫌われ者の男性が自宅で亡くなっていた。
見つけたのは近所に住む高校生。
男性は「名を刻む死を遂げたい」と日記に書き残していたが、一体「名を刻む死」とは?(「名を刻む死」)
5話目。『さよなら妖精』にでてきたマーヤの兄が日本に来て、観光をせずに太刀洗の取材に付き合い、行動を共にすることになります。
太刀洗が調べていのは、幼い女子をナイフで刺し殺した事件でした。
犯人は逮捕されていますが・・・。(「ナイフを失われた思い出の中に」)
6話目。長野県で発生した水害で救出された戸波夫妻は、三男が置いていったコーンフレークを食べて何とか生き延びたとのことでした。
しかし、このことを不思議に思っていた人がいました。
それは三男にコーンフレークを売った店の息子でした。
彼と一緒に戸波夫妻に会いに行った太刀洗は彼らに変な質問をします。
「コーンフレークには、何かかけましたか」と。(「綱渡りの成功例」)
どの真実も人間の悲しさ、性が垣間見られます。
太刀洗の冷徹さと見る目の確かさ、そして、人間に対する優しさと暖かさ。
恰好いい女性です。
彼女の物語をもっと読みたいです。
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://coco.asablo.jp/blog/2018/09/07/8957530/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。