中山七里 『護られなかった者たちへ』 ― 2020/12/09

東日本大震災から4年後、仙台市の古いアパートで死体が見つかる。
死体は四肢を拘束され、口も塞がれており、典型的な餓死の症状を示していた。
所持品はそのまま残っており、物盗りではなさそうだった。
運転免許証から遺体が仙台市青葉区福祉保険事務所 保護第一課長三雲忠勝のものであることがわかる。
県警捜査一課の苫篠誠一郎たちが三雲のことを調べていくと、彼は人格者として知られており、どの人も人から恨まれたり憎まれるような人ではないと言う。
仕事では生活保護の業務に長く携わっていたようだが、彼が市民と直接接触する機会はなかったようだった。
その4日後、行方不明だった宮城県会議員の城之内猛留の死体が、高森山公園の近くの森の中にある農機具小屋で見つかる。
口蓋周りと四肢に拘束痕があり、餓死による衰弱死で、三雲の時と酷似していた。
その上、彼は三雲同様、議会一の堅物で、金に綺麗で高邁な信条を実践している、清廉潔白がバッジをつけて歩いているような人間として評判だった。
苫篠は二人に何らかの共通点があると考え、捜査をしていく。
そして判明したことは・・・。
生活保護がテーマです。
読んでいて、悲しくなってきました。
生活保護は最終手段だと思うのですが、不正受給をする人がいたり、財政などの関係で審査基準が厳しくなり、本当に必要な人に受給されるというわけでもないのです。
生活保護関連の職員が、そういう状況を知りながら、受給者を選別していかなければならないというのは辛いことでしょうね。
如何にも中山さんらしいミステリだと思いました。
初めての中山さんを読む方にはいい本でしょう。
映画になるようですので、読んでみるといいかも。
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