大山誠一郎 『ワトソン力』2021/05/28



警視庁捜査一課に所属する和戸宋志は何者かに拉致され、監禁されました。
一体何者が…と思う宋志。
実は彼には不思議な力があったのです。
その力を彼は「ワトソン力」と名付けていました。

「ワトソン力」とは、「そばにいる人間の推理力を飛躍的に向上させる特殊能力」のことです。
この力のおかげで、彼は奥多摩交番に勤務している時に建築現場での不可能犯罪を解き、ア、間違えました、彼のそばにいた関係者が解いたのに、現場に来た捜査一課員に彼が解いたと勘違いされて、捜査一課に引っ張られたのです。
今や彼のおかげで彼の所属する捜査一課第三係は検挙率十割を誇っているのです。

彼を拉致したのは今まで関わった事件の関係者ではないかと思った宋志は、七つの事件を回想していきます。
雪の日の不可能犯罪、バスジャックされたバス内の死体、求婚者の毒殺…。
彼が自分の力で辿り着いた犯人とは…。

週刊文春のミステリー8位の作品だったので読んでみましたが、本音を言うと読まなくてもよかったかも。
後の方は飛ばし読みでした、笑。
私は物語性のあるミステリーが好きなのであって、この作品のように軽い謎解きのミステリーはあまり好きではないみたいです。


犬たちはトリミングがそろそろ必要になってきました。


おやつを置いて、待てをします。早く食べたいので、兄は舌を出しました。
兄はちゃんと待てます。


みなさんが知ってらっしゃるように、この子は駄目です。
一回目は待ちましたが、二回目は待てなくて、ちゃっかり食べちゃいました。

加藤実秋 『メゾン・ド・ポリス5退職刑事と迷宮入り事件』&『メゾン・ド・ポリス6退職刑事と引退大泥棒』2021/05/13

約六ヶ月ぶりに美容院に行ってきました。
髪は10㎝ぐらい伸びていて、長い髪の嫌いな私にはウザくて仕方ありませんでした。バッサリと切ると、なんと快適なことか!
帰りに今流行(だよね)の台湾カステラをコンビニで買いました。


ヤマザキの商品ですが、7-11にしか売っていないそうです。
日本のカステラよりもフンワリしていて、間にクリームが挟まっています。
台湾カステラの専門店のものはどうなのか、興味がありますが、自宅の付近に買えるお店はないみたいです。残念。


『メゾン・ド・ポリス』は始めの方は読んでいるのは確かなのですが、3巻と4巻は読んだか記憶にありません。
読んでいても、いなくても変わりはなさそうなので、5巻と6巻を読んでみました、笑。
そしたらなんと、6巻で終わりのようです。


台東区清川の簡易宿泊所で殺人事件が起こります。
テレビの音に怒った隣の部屋の男が包丁で刺し殺したというのですが、殺された男は2008年の『菖蒲町医師強盗殺人事件』で殺害された内科医の腕時計を身に付けていたというのです。
『菖蒲町医師強盗殺人事件』は未解決で迷宮入りしていました。
元所轄の刑事だった迫田保は現役時代にこの事件を担当していました。
新たな被疑者の登場で、メゾン・ド・ポリスの面々は捜査協力をすることになります。
しかし捜査はそう簡単には運びません。
捜査の合間にストーカー事件、バッグ強奪事件、楽器盗難事件、金属盗難事件と4つの事件まで解決しなければならないのですから。忙しいですねぇ。
読む方もゴチャゴチャしていて大変でしたけど。
さて、迫田痛恨の『菖蒲町医師強盗殺人事件』は解決するのでしょうか。


さて、最後のお話(だよね)。
柳町北署の刑事課に配属された新人女性刑事でメゾン・ド・ポリスのおじさんたちから「ひよこ」と言われている牧野ひよりは一大決心をします。
何かは最後のお楽しみに、笑。

柳町北署管内で少女誘拐事件が発生しました。
同じ日に暴力団の男が殺され、彼のスマホには誘拐された少女の祖父・然治の電話番号が残されていました。
然治に電話をかけても出ず、彼は行方不明になっていました。
実は然治はかつて世間を騒がした窃盗団『忍び団』のリーダーだったのです。
誘拐犯の狙いは何なのか。
メゾン・ド・ポリスの面々と『忍び団』の元メンバーが組んで少女救出に頑張ります。

ひよこちゃんはこれからもメゾン・ド・ポリスのおじさんたちから逃れられない運命ですね、笑。
果たして最後と言いつつ、またがあるのか…。

1巻、2巻のうちは新人刑事と退職刑事のやりとりが面白くて読んでいたのですが、ごめん、今回読んでみると全く面白くなかったです。
なんででしょうねぇ。私の理解力の衰えかしら?

歌田年 『紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人』2021/05/07

『このミステリーがすごい!』大賞の作品が次々と出ていますね。
この本は第18回の大賞受賞作品です。
私的にはこの頃読んだ『このミステリーがすごい!』受賞作品の中で、一番のお勧めです。


渡部圭は新宿にある渡部紙鑑定事務所の紙鑑定士兼紙営業士です。事務所といっても彼一人しかいないんですけど。
紙鑑定士とは何か。
「持ち込まれた紙のサンプルを調べ、メーカー、銘柄、紙の密度でもある米坪を推定し、紙厚を測定する」職業らしいです。
得意なものは本で、カバー、オビ、表紙、見返し、口絵、本文、上製本なら芯ボールなど、それらのパーツにどんな銘柄の紙が使われているかを鑑定します。
予算に合わせて、それらに準ずる銘柄を提案することもやります。
どこの版元であろうが、書籍や雑誌の使用紙明細や刷り部数も聞きだすことができます。
判型とページ数がわかれば、納品数量から逆算して部数を弾き出すこともできます。
こういう風に書くと、本当にある資格みたいですが、実はないんです。
紙営業士(ペーパーアドバイザー)は本当にある資格です。

彼の事務所に二十代半ばの可愛らしい女性がやってきます。
カレシの浮気調査をしてもらいたいとのこと。
アレ、ここは紙鑑定事務所ですよね。
彼女は<渡辺探偵事務所>と間違って入って来たのです。渡辺探偵事務所には神探偵がいて、何でも解決してくれるんだそうです。
「神」と「紙」の間違いですね、笑。
彼女は米良杏璃という美容師で、鑑定士ということからどんなものでも鑑定できちゃうと思ったのか、渡部にプラモデルの写真を見せて鑑定してくれといいます。
それは戦車のジオラマで、今までプラモデルなんか作ったことのないカレシが急に作ったそうです。
こんなの鑑定できないと渡部は断りました・・・と書きたいんですが、彼は懐具合が寂しかったので、引き受けちゃいました。
前に勤めていた会社の得意先に月刊の模型専門誌があり、そこから専門家を紹介してもらおうと考えたからです。

『ホビーグラフ』の鈴木に会い、フリーのプロモデラーを紹介してもらいましたが、その人は別の人を紹介してきました。
超ベテランモデラーの土生井昇という「伝説のモデラー」です。
高尾に住んでいる土生井のところに行ってみると、ゴミ屋敷かと思われるようなとんでもない家に認知症の母親と一緒に住んでいました。
室内に入ると、もの凄い数のプラモデルが…。”積みプラ”って言うんですって。
彼は何らかの事情で自分の作品を発表できなくなり、今はメーカーからの依頼でプラモの完成品を作る仕事をしているようです。
土生井はネット情報に疎いようなので、作品を載せられるようにTwitterを教えてあげました。
杏璃から渡された画像を見せると、流石としか言い様のない推理を聞かせてくれました。

杏璃の問題は土生井のおかげで無事解決しましたが、報酬を値切られ、持ち出しとなり、ガックリきた渡部でした。
悪いと思ったのか、杏璃がお客を紹介してくれました。
これまたプラモデルのことで相談したいというのです。
専門でないので断るつもりが、また金に引かれて引き受けてしまいます。
依頼人は曲野晴子。三ヶ月前から行方不明の妹を探してもらいたいというのです。彼女は同居している妹の部屋にあった白い家のジオラマを持って来ました。
警察はジオラマの写真を撮って行ったけど、それ以来連絡はなし。
探偵社に依頼すると騙され、困っていた時に渡部の話を聞き、藁にも縋る思いでやってきたのでした。

プラモデルのことは土生井ということで、新しいジオラマが出現するたびに渡部は土生井に見せ、土生井は的確に推理していきます。
渡部の紙鑑定士の資格は事件には全く関係がないです、笑。
渡部は土生井の意のままに動くだけ。土生井がホームズで渡部がワトソンですね。

ジオラマを調べていくうちに、渡部と土生井は、それがとんでもない計画を示唆していることに気づきます。

著者の歌田さんは29年間出版社に勤務し、プラモデルと紙の専門的な知識を培ったそうです。どうりで詳しいはずですね。
シリーズ物にしてもらいたいです。よろしくお願いいたします、笑。


そうそう、新国立バレエ団で「コッペリア」を2時から無料で無観客ライブ配信しています。
明日が最後で、コッペリアが小野絢子ですので、是非観てみてください。
ついでに「上野の森バレエホリデー2021」でも9日までオンライン・プログラムを見ることができます。
まだ観ていませんが、モーリス・ベジャールの特別講演会「バレエ・リュスと自作を語る」を観てみようかと思っています。

堂場瞬一 『沈黙の終わり』2021/04/28

堂場さんの「作家デビュー20周年記念碑的作品」という文に惹かれて読んでみました。
警察物だと思ったら違いました。今回は新聞記者たちの奮闘記です。


松島慶太は東日本新聞柏支局の支局長として赴任してから一週間。以前は本社で編集委員をしていましたが、定年を前に胃がんに罹り、思うところがあり現場に戻りました。
三十年以上前に県警で知り合い、今は野田署長の小野のところに挨拶に行って話していたところに、重大事件が発生します。
七歳の女の子が行方不明になってから、野田市今上の江戸川近くにある小さな森で遺体で見つかったというのです。

古山孝弘は東日本新聞埼玉支局の記者ですが、来月、異動で本社の社会部へ行くことになっていました。
「週間ジャパン」で千葉の事件を読み、何かが気にかかりました。
地図を見て気づきました。四年前、埼玉支局に配属されたばかりの頃、小学二年生の女の子が行方不明になった事件です。場所が野田市の現場と直線距離にすると五百メートルほどしか離れていないのです。
吉川署の副署長が知り合いだったので問い合わせてみると、女の子はまだ見つかってはいないが、同じ犯人が川を挟んで千葉と埼玉で事件を起こしているとは思えないと言われます。
そう言われても引っかかる古山は柏支所にいる大先輩の松島に電話をかけて自分の考えを話し、資料を送ります。
すると、資料を読んだ松島から三十三年前の流山で七歳の女の子が殺された事件を思い出したと連絡があります。遺体は江戸川近く、野田と吉川の現場から直線距離で七キロの所で見つかり、犯人はわからないままでした。

松島は三十三年前の事件のことを野田署長の小野にぶつけることにします。
小野はその時、捜査一課の刑事で、事件の捜査本部に入っていたと言いますが、一生懸命捜査してもどうにもならないことがあるというばかりです。
埼玉の事件のことも伝えるのですが、小野の反応は薄いままでした。

その頃、古山は捜査一課長から警告されます。
間違いなく、警察には取材されると都合の悪い事実があると確信する古山。
同じ頃、松島に面識のない警察関係者と思われる朽木という男から、三十三年前の事件のことで気をつけるようにという電話があります。

古山は被害者の家族と会っている時に、別の行方不明事件のことを聞きます。
他にも同じような事件がないかと調べてみると、行方不明事件が他に2件、殺人事件が2件見つかります。同じような事件が合計7件あったのです。
被害者の共通点は全員六歳から九歳の小学校低学年の女児で、通っていた塾が永幸塾で、塾帰りに行方不明になっていました。
これは連続した事件なのか。
警察は何を隠そうとしているのか?不祥事、捜査ミス、隠蔽工作?

古山と松島は警察庁のコメントをもらい、7つの事件に関した記事を書きます。
記事が出た後に、野田署長の小野が自殺します。
事件と何か関係があるのか…?

警察物ではないので、事件に関する直接的な捜査シーンはありません。
記者たちは警察を刺激しないように、周りから攻めていく感じです。
新聞記者ってもっと自由に取材できると思っていましたが、そうでもないんですね。
松島や古山みたいな記者らしい記者って、もはや絶滅危惧種みたいなものなのですね。
忖度って言葉が一時期流行りましたが、今やマスコミは忖度だらけなのかしら?
事件の記事は正義感から書くという記者が一人でもいて欲しいです。

松島の言葉が熱いです。

「政治記者は書かな過ぎるんだ。時代の目撃者とか言って威張っているけど、見るだけで記録者にはなっていない。結局、権力の近くにいるだけで満足してるんだろう?」

この言葉、今の政治記者たちにあげたいですね。

警察物ではない堂場さんの本を初めて読みましたが、私は警察物の方が好きです。
松島や古山がそれほど人間的に魅力的じゃないからかしら、笑。
警察内部の話の方が面白くなりそうなので、そちらの方を書いて欲しいですね。

読んだ本2021/04/27

本が溜まってきたので、一遍に紹介します。


ペネロピ・フィッツジェラルド 『ブックショップ』
映画「マイ・ブックショップ」の原作本。細かな点で違っているところもありましたが、ほぼ映画と同じ内容です。
大きな違いはクリスティーン。私は映画の彼女の方が好きです。
本には『ロリータ』は出てきましたが、ブラッドベリーは出てきませんでした。

”人間は絶滅させる者とさせられる者に分かれている、いかなるときも前者のほうが優勢だ”

この言葉の通りにフローレンスはなってしまいましたが、現実ではどうでしょうね。願わくは、絶滅させる者とならないことを…。

佐藤青南 『白バイガール フルスロットル』
神奈川県の白バイ隊員・本田木乃美は全国白バイ競技会へ出場することになりました。彼女の目標は箱根駅伝の先導で、目標に一歩近づけました。
茨城県ひたちなか市、自動車安全運転センター安全運転中央研修所で、全国白バイ安全運転競技会に出場予定の関東七都県から集まった交通機動隊員たちが合同訓練を行っていました。木乃美は誰とでも仲良くなれるという性格なので、ライバルなのにみんなと仲良くなっていきます。
そんな頃、優勝候補の他県の女性白バイ隊員たちが次々と猫をよけようとしてハンドル操作を誤り事故を起こし、負傷していきます。不審に思った木乃美は仲間の助けを借り、調べることにします。
同じ頃、横浜市内で椿山組と『凶龍』との抗争が勃発。椿山組を除名された三人が怪しい動きをしています。彼らの狙いは…?

完結篇なので、もう白バイ隊員たちに会えなくなりますが、番外篇希望します。

喜多みどり 『弁当屋さんのおもてなし しあわせ宅配篇2』
「くま弁」で宅配のバイトをしている雪緒のお話4つ。
第一話:突然弟の薫が雪緒のところにやってきます。雪緒に今の仕事のことを色々と聞いてきますが、何かある様子。心配して電話をしてきた叔父によると、バイトをしている叔父の店でミスをし、それから仕事に来ていないとのこと。さて、どうしたらいいものか…。
第二話:常連の黒川の娘、茜が夏休みで帰省してきます。いつもは休む「くま弁」ですが、今年はユウが仕事を入れています。一緒に過ごせなくて寂しく思っている千春に雪緒と茜がお節介をします。
第三話:常連さんからの不思議なお届けもののお話。墓地までおはぎを持って行って、幽霊に渡して欲しいと言うのですが…。
第四話:急に雪緒が前の会社を辞めるきっかけになった猪笹美月が電話をしてきます。彼女のことがずっと気になっていた雪緒。会って話すと元気そうでしたが、雪緒の仕事のことを聞くと美月は…。

仕事には貴賤はないとは言うけれど、世間一般の見方は変りません。
雪緒はどうやってそんな人たちの気持ちを変えっていったのでしょうか。

青山美智子 『鎌倉うずまき案内所』
出てくる人たちが次々と関わっていきますので、年表を書きたくなりますが、心配しないで下さい。後ろに年表があります。平成元年から平成31年まで、いろいろありましたね。最初は何だこれ、と思いましたが、ぐるぐるしたら、もう一回したくなりました。
こんな変った案内所があったら、私も行きたいですわ、笑。

佐伯泰英 『初詣で 照降町四季1』
18歳の時に男と駆け落ちをした佳乃が三年ぶりに照降町に戻ってきました。
実家は鼻緒屋。父親は病に伏せっており、脱藩武士の八頭司周五郎が奉公人として働いています。
佳乃は父親の代わりに職人として働くことになりますが、昔取った杵柄で、腕は鈍っていませんでした。
彼女の選ぶ鼻緒の斬新さもあり、老舗の下駄問屋・宮田屋にも認められていき、次々と仕事を頼まれます。
しかしそんな佳乃を追って、駆け落ち相手の三郎次がやってきます。

江戸時代に女の職人が結構いたのですね。
三郎次のことにけりがついたので、次からは八頭司のことがメインになるのでしょうね。四月から四ヶ月連続刊行だそうで、佐伯さんは多作な作家さんなのですね。

高野結史 『臨床法医学者・真壁天 秘密基地の首吊り死体』
第19回「このミステリーがすごい!」大賞の隠し玉だそうです。大賞を取ったのは『元彼の遺言状』です。

法医学者の真壁天は函館医大法医学教室の助教です。人と接するよりは死体を解剖する方がいいという変った人です。それなのに教授が彼に児童虐待を鑑定する仕事を押しつけてきました。彼の鑑定は的確なので、当てにされてしまい、抜け出せません。
しかし、しばらくして彼が子どもの虐待を指摘した親たちが次々と首吊り死体になって殺されていきます。その状態は彼が小学校の時に見た親友の首吊り死体と似ていました…。

なんかあっけなく読み終わってしまいました。
真壁のキャラが面白いので、シリーズ化してもよさそうですね。

平居紀一 『甘美なる誘拐』
こっちは第19回「このミステリーがすごい!」大賞・文庫グランプリ受賞作品。
色々と賞があるんですね。知りませんでした。

市岡真二と草塩悠人はヤクザの使い走りをやっていました。
上司の荒木田はセコく、人使いの荒い奴です。宝くじを買いに行かされ、やりたくもない地上げ屋の真似をさせられ、パーティ券のノルマを押しつけられ…。このために借金までしなくてはならず、まずいことに行ったら金貸しの爺さんが死んでいたりしました。
ある日、彼らは荒木田から宗教団体・ニルヴァーナの教祖の孫娘を誘拐するという仕事を押しつけられます。

地上げされそうな植草部品がどこに関係するのかと思ってたら、そこかという感じでした。
騙された感はありますが、ミステリーとしてはそこそこです。

桜木紫乃 『いつかあなたをわすれても』


桜木さんはこう言っています。

母が、私の名前を忘れていることに気づいたとき、実はあまり悲しくなかったんです。おおそうか、とうとうきたか、という感じでした
(中略)
「おかあさん、わたしをわすれていいよ。わすれたほうが、さびしくないから。わすれたほうが、こわくないから」この言葉を、気持ちを、母に手渡したい。
その気持ちが、絵本というかたちになりました。

とっても素敵な絵と文です。
母の日に、大人になった女性に読んでもらいたい絵本です。


今週のおやつ。


可愛らしいプティ・フールです。
両側にあるソフトクッキーサンドの中にクリームが入っていて美味しいです。

中山七里 『ラスプーチンの庭』2021/04/20

1月に出版された犬養隼人シリーズの最新作です。


犬養隼人の娘の沙耶香は腎不全で帝都大付属病院に入院している。
沙耶香と仲のいい、同じ病気で同じ15歳の庄野祐樹は別の治療法に切り替えると言って退院していき、その一ヶ月後に亡くなる。
犬養は紗耶香と葬式に行き、祐樹の首から下に変な痣があるのに気づく。

それからしばらくして多摩川台公園で女の自殺死体が見つかり、その死体にも祐樹と同じ痣があった。
この二つの家族が<ナチュラリー>という小冊子を持っていたため、犬養は<ナチュラリー>を調べてみることにする。

<ナチュラリー>は自然治癒団体名で小冊子は会員にしか配付されていない。
主宰が織田豊水といい、怪しい経歴の持ち主で、ラスプーチンみたいな男だった。
世田谷区にある本部で織田から話を聞いたところ、痣は根気棒を使い、家族が施術しできたものであることがわかる。

そんな頃、<ナチュラリー>が世間の注目を集める。
というのも、神楽坂46の絶対的エース、桜庭梨乃が子宮頸がんに罹り、<ナチュラリー>の施術で完治したと公表し、同じ頃に与党国民党の久我山照之議員が緊急会見を開き、自分は食道がんのステージ2で、<ナチュラリー>の会員である。
<ナチュラリー>に関する誹謗中傷や医療行為への妨害を一切許さないと宣言したからだ。

やがて桜庭梨乃のsnsのコメント欄には誹謗中傷、脅迫文、殺人予告まで寄せられるようになる。
庄野家と四ノ宮家には悪意のこもった匿名の手紙が届き、庄野の母親が自殺未遂をする。
そして同じ頃、織田豊水が死体となって見つかる。
犬養は殺人事件が起こり、やっと大っぴらに捜査ができることになるが…。

民間療法がどのように殺人につながっていくのか、そこに行くまでがとっても長かったです。
犯人の動機は理解できますが、なんでそんなことが復讐になると思ったのか、そこがわかりません。
だって帝都大付属病院は全然打撃を受けてませんよ。
自分たちと同じような不幸な人を増やしているだけでしょう。
どんでん返しもないし、ちょっと残念は作品でした。

このシリーズではこれから紗耶香ちゃんのことがメインとなっていくのでしょうかね。
次のテーマは何かしら?


<今週のおやつ>


太陽ノ塔オリジナルクッキー缶「タイヨウノカンカン」。

クッキーを頼むと空き缶がたまってきます。きれいな缶ばかりなので、捨てたくないのですが、使用するには微妙な大きさなのよね。どうしようかしら…。

天祢涼 『謎解き広報課』2021/04/12

一応お仕事上の謎解きもあるので、ミステリーに入れときました。


新藤結子は大学卒業時に結婚する予定だった恋人に捨てられます。
彼曰く、「結子はがんばりすぎだから、僕にはまぶしすぎる」なんて、どういう意味よ。
彼の母親からは言われた「ちゃんと仕事をして親戚一同に一目置かれる女性になって」などという言葉を真に受けて、母親のつてでL県の高宝町役場に就職することにしていました。
これも彼には気に入らなかったみたいです。
その上、彼が「一緒にバスケができたらいいね」と言ったからバスケ部に入って頑張っていたのに、そのバスケ部の部員たちも彼と同じように感じていて、結子はみんなから失笑されていたそうです。
卒業旅行にも来ないでなんて言われてしまいます、グスン。

こんな目に遭った結子ですから、仕事は一年限定で、高宝町で淡々と仕事をすると決めました。
ところが広報課で広報紙担当になり、各課のお知らせを載せるだけの広報紙だったのに、係長の伊達に広報誌を変えると宣言されてしまいます。
伊達は全国広報コンクールで表彰されたことがあり、裏広報紙を作ったり、全国の広報マンと繋がりがある、いわゆる広報紙のレジェンドみたいな人でした。
彼曰く、町を愛してもらえるような広報紙を作る。
そんなことできないわと思う結子。
原稿の清書や原稿を書けば、伊達から直された大量の赤字。
つらいのは取材です。
第九自主防災会に取材に行ったら解散すると言われ、高宝町にゲームの聖地があると聞き取材を申し込むと断られ、伝統の祭、高宝火礼祭では唯一の取り柄の写真がすべてパーになったり…。
そのたびに謎解きをやっちゃいますが、その結果、さらなる試練が…。

町長の鬼庭は何故か広報課を目の敵にしています。
伊達とは友だちだというのに口をきかず、二言目には必ず「廃刊」と口に出します。
実は彼は元広報マンで、全国広報コンクールで賞をとるほどだっとそうです。
それなのに何故?

都会で育った女の子が、田舎の町で仕事をしていくうちにだんだんと町に溶け込み、地元愛に目覚めていくというお話です。
男に振られてという理由がショボいし、ミステリーというにはちょっと軽過ぎです。
役所の広報課に関するお仕事本として読むといいでしょう。



アン・クリーヴスのシェットランド・シリーズのDVDを買いました。
1話が2時間以上で、時間がなかったので1話の途中で止めてしまいました。
落ち着いて観たい時に観ますわ。
少し観てわかったのは、真ん中の女の人はウィローじゃないことです。
アリソン・トッシュ・マッキントッシュって言う役名です。
キャシーが大きくて中学生?高校生?ぐらいでびっくりしました。
日本のドラマと同じように、題名を借りていても内身が微妙に違うってことがあるんですね。そういえばアガサもそうでしたわ。
でもDVDを買ってよかったです。
シェットランドの風景がすごく綺麗なんです。行ってみたくなりました。


内藤了 『DOUBT 東京おもてうら交番・堀北恵平』2021/04/01

昨年から何もしていないせいか、時間が経つのが速いです。
もう4月になってしまいました。
こんな生活、後どれぐらい続くのでしょうね。


東京おもてうら交番・堀北恵平シリーズの5巻目。

新人女性警察官堀北恵平は八ヶ月の実地研修を終え、府中にある警察学校へ入学して初任補修科課程を学んでいます。
この研修を修了すると晴れて一人前の警察官になります。

恵平は同僚の平野刑事と桃田鑑識官と三人で、東京駅うら交番に勤務していた柏村巡査のことを調べ始めます。
というのも、恵平と平野が事件で行き詰まっていた時、地下道を歩いているといつの間にかふるびた交番に辿りつき、その交番にいる柏村が恵平たちに事件解決のヒントを与えてくれていたのですが、柏村は昭和三十五年に人質立てこもり事件で殉職していたのです。
その交番に関して恐ろしい噂があります。
「訪れた者は1年以内に死ぬ」という…。
恵平は自分も死ぬわけにはいかないし、平野のことも死なせないと決心し、柏村が自分たちを交番に呼ぶのには何か理由があるのではないかと考え、その理由を探ろうと思ったのです。

ある日曜日、研修が忙しくて、なかなか東京駅には行けなかった恵平ですが、久しぶりに東京駅に会いに行くことにします。恵平は東京駅が好きで、実地研修の時に毎日東京駅に挨拶していたのです。
靴磨きのペイさんもホームレスのメリーさんも元気でしたが、気になることを聞かされます。
メリーさんのホームレス仲間が神隠しにあっているというのです。それも一人ではなく、ホームレスの数が減っているようだというのです。
とりあえず恵平はおもて交番に行って相談することにします。

そんな頃、中央清掃工場の可燃ゴミ集積プールで遺体の一部が見つかります。
応援に行っていた平野から電話でそのことを聞き、恵平は何かがひっかかります。
ホームレスの神隠し…。
気になるとほっとけない恵平が動き出します。

だんだんと明らかになっていくうら交番の謎。
恵平が呼ばれる理由は何か。おじいさんと関係があるのでしょうか?

事件は気持ちが悪いけれど、恵平ちゃんはどんな人でも受け入れる、心のおおらかないい子で、応援したくなります。
これからも彼女の活躍から目が離せられません。


体力がないくせに、動き回りたい弟犬。


ハアハア言いながら、おもちゃを追っています。
あまりやり過ぎると、怪我をしないかと心配です。
何しろ40歳を越していますからね、笑。

麻見和史 『茨の墓標 警視庁分書捜査官』2021/03/30

警視庁文書捜査官シリーズの八作目。


東京都小金井市で、家の取り壊しの事前確認に訪れた建設会社の社員が、庭で埋まっている人間の右手を見つけ通報してきた。
現場で不可解なメモが見つかり、文書解読班が呼ばれる。
そばに落ちていたボールペンに印刷されている文字とポケットに入っていた『四行詩』が解読班に任される。
矢代朋彦と夏目静香がボールペンの出どころを調べ、鳴海里沙が四行詩の方を調べることになる。
ボールペンはノベルティグッズとしてあきる野市の不動産屋が配っていた。
四行詩は神保町の自称『古本探偵』に調査を依頼すると、自費出版された詩集に似たような詩があることがわかり、3人は詩人に会いに行くが決め手にはならなかった。

次の日、狛江市の古いアパートの階段下で胸を刺されて死亡している男の死体が見つかり、その男のジーンズのポケットに四行詩が入っていた。

2つの詩からわかったのは、犯人は自分で作った詩に合わせて、死体損壊や死体遺棄を行っているということ。
理沙はふたつの四行詩の分析を続け、矢代と夏目は最初の被害者が利用した国分寺駅近くの酒販店から被害者のように考え行動してみることにする。
その結果、矢代たちは被害者が泊まったビジネスホテルを見つける。

文書解読はなかなか進まず、とうとう理沙は恩師・遠山のところまで押しかけるが進展はない。
仕方なく、3人は遠山のアドバイスを聞き、被害者の住んでいた奥多摩の辰井集落まで行ってみる。
そこでわかったのは、第二の殺人事件の被害者がこの集落に住んでいたということだった。

そうこうするうちに第三の殺人が起こる。

今回は夏目のキャラ立ちがすごいですね。
BL好きで、同人誌に小説を書いているんですかぁ。
こんなキャラはいらないから、文書解読の方の充実をお願いしま~す。


<今週のおやつ>


♡の形がかわいい、マドモワゼルCのクッキーです。

堂場瞬一 『骨を追え ラストライン4』2021/03/23

東京は満開とは言いますが、近所の桜はまだ満開ではありません。


高校のグランドの桜が七分咲きぐらいかな?
今週末まで持ってくれると良いのですけど…。


岩倉剛が主人公のシリーズ、ラストラインですが、今回は他のシリーズの人たちが参加しています。
何故かというと、「堂場瞬一作家デビュー20周年記念3大警察シリーズコラボ」だそうです。
3大警察シリーズとは、「ラストライン」、「警視庁追跡捜査係」、「警視庁犯罪被害者支援課」。
高城曰く、「警視庁の中で三大嫌われ部署」だそうです。
この3つのシリーズの相互乗り入れだそうですが、どちらかといえば「ラストライン」が「警視庁犯罪被害者支援課」に乗っ取られた感じです。
岩倉のおじさん臭より、まだ若い村野の方がいいですわ。
もっと贅沢をいうと、「アナザーフェイス」のイケメン大友鉄が出てくれれば、言うことないです(笑)。


岩倉剛は南大田署から立川中央署に二週間前に異動し、恋人の実里はNYにいる。
妻との離婚は来月成立する予定で、娘は晴れて大学に入学する。

新しく組んだ相手が熊倉恵美。
35歳の彼女は機動捜査隊に勤務する同僚と半年前に離婚し、本部の捜査三課から実家が近い立川中央署に異動して来た。
離婚のショックから立ち直っていないらしく、なんだかめんどくさい性格のようで、なんとも組みたくない相手だった。

ある日、女性刑事課長の亮子から電話が来る。
多摩川沿いの廃屋を取り壊し中に、古い遺体が見つかったというのだ。
「伝説的な記憶力」を持つ岩倉は、十年前の女子高生の失踪事件を思い出す。
その時の女子高生が殺されて、そこに埋められているのかもしれない。

検死の結果、十年前に失踪した、当時18歳の都立高校三年生、真中礼央の遺体だということがわかる
当時、礼央の同級生で交際相手だった三川康友が第一容疑者と考えられていたが、具体的な証拠を見つけられず、捜査は行き詰まっていた。

岩倉は癌に罹り、余命幾ばくもない三川に会いに行く。
三川が犯人だとの線をまた追おうとすることに岩倉は引っかかりを感じていた。

家族のケアのために、犯罪被害者支援課の村野秋生がやって来る。
彼は被害者家族と接触し、様子を知るうちに違和感を抱き始め、図らずも岩倉とともに捜査に参加することになる。

果たして岩倉と村野は事件の真相に迫ることができるのか…。

岩倉よりも村野の方が活躍しています
膝を悪くしていなければ、村野はバリバリ、一課で働いていたでしょう。
村野の元恋人の愛はカッコいい女性です。二人の関係は同志という感じですが、もう一度付き合い始めるといいのにと思います。
村野は今後亮子からもらった課題、「容疑者家族のケア」に着手するのでしょうか。
次の「警視庁犯罪被害者支援課」シリーズが楽しみです。
アレ、これって「ラストライン」だったわね、笑。


<今月のおやつ>
また六花亭のおやつ屋さんを頼みました。


今月のは外れだったな。
トヨシロは甘いと思って食べ始めたら、じゃがいもの入った甘くないパイでした。